第13回WPIサイエンスシンポジウム「サイエンスを通じて広がる世界」

開催報告

11月16日、京都大学百周年時計台記念館にて、第13回WPIサイエンスシンポジウム「サイエンスを通じて広がる世界」を開催し、300名を超える発表者・参加者にご参加いただきました。

斎藤通紀 ASHBi拠点長、宇川 彰 WPIプログラム・ディレクターの挨拶で、シンポジウムが始まりました。
まずは、サイエンストーク「わたしたちヒトについて」が行われました。

『右と左の分子の世界』
慶應義塾大学 ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(WPI-Bio2Q)

サイエンストーク

哺乳類では、L型アミノ酸がタンパク質合成の基本であり、D型が誤って組み込まれると分子構造が乱れるため、L型選択が生命の維持に不可欠と信じられてきました。笹部先生のトークでは、哺乳類の大脳では約25%のセリンがD型であることが発見され、記憶や感情形成に関わるNMDA型グルタミン酸受容体の調節に重要な役割を果たしていることをご紹介いただきました。我々の腸内に住む共生細菌についても紹介いただき、細菌がL型アミノ酸をD型に変換し、その一部が免疫制御や病原菌抑制に関与している可能性があること、腎臓がD型アミノ酸の分解や排泄を担い、全身のアミノ酸バランスを制御していること等をお話しいただきました。

『対話型AIを用いたDNA配列設計の自動化』
大阪大学 ヒューマン・メタバース疾患研究拠点 (WPI-PRIMe)

プラスミドベクターは、細胞に新たな機能を導入するための環状DNA配列で、生命科学研究で頻繁に利用されています。1つのプラスミドを設計・合成するには約1週間を要し、手作業で配列を設計しており、設計や合成プロセスでのミスが課題となっています。この問題を解決するため、森先生はAIを活用してプラスミドベクター設計を支援するシステム「QUEEN」を開発されました。この仕組みにより、設計ミスの削減や履歴の明確化が可能に、設計データを基に実験手順や使用したDNAマテリアルの記録を作成することもでき、効率的かつ再現性の高い研究が可能となることをお話しいただきました。

『RNAから切り拓くヒトゲノムの未踏領域』
京都大学 ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)

ゲノムとは、DNAに書かれている遺伝情報全体の呼称です。2003年にヒトゲノムのドラフトが完成し、2005年には次世代シークエンサー技術が登場し、今、まさに一細胞レベルで、個人のゲノム解析が可能な時代となりました。エンハンサーとは遺伝子発現を調節するスイッチであり、細胞種ごとに特異的に働きます。小口先生は、世界中の研究者と協力して、この病気と関わるエンハンサー、特にエンハンサーRNAについて研究されています。トークの中で先生が見つけた免疫疾患に関連する多数のエンハンサーについてご紹介いただきました。これらの発見は、新たな創薬標的の発見につながる可能性があります。RNAを介してゲノム情報を読み解き、病気の理解や克服に貢献したいとお話しいただきました。

参加者の一生懸命ノートをとる姿が印象的でした。質問も多く、活発なトークイベントとなりました。

昼食を挟んで、「高校生 x 研究者 ポスター発表会」が行われました。高校生のポスター(28課題)の中から、最優秀ポスター賞と優秀ポスター賞がWPI研究者によって選ばれました。

最優秀ポスター発表賞

お茶の水女子大学附属高等学校
「卵が使われているレシピにおいて卵の部分のみを植物性食品で代替する方法」

優秀ポスター発表賞

岐阜県立岐阜高等学校
「ヤマトサンショウウオから考える温暖化による種の保存の問題」

優秀ポスター発表賞

京都府立洛北高等学校
「琵琶湖湖底の環境要因がD.pulikariaに与える影響」

会場では、WPI拠点研究者・大学院生によるポスター発表と拠点を紹介するブース展示も行われ、高校生とWPI拠点との交流が行われました。
ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。また、来年お会いしましょう。

概要

第13回WPIサイエンスシンポジウム
サイエンスを通じて広がる世界

日時

2024年11月16日(土)
10:50 – 16:30

場所

京都大学百周年時計台記念館

参加費

無料

事前登録制

本イベントは終了いたしました。

WPIサイエンス
シンポジウムについて

「私たちは私たちについてどのくらい知っている?」

文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)は、「研究分野や国のボーダーを越えて、第一線の研究者が集まる世界に開かれた研究拠点を日本に構築する」ことを目的とし、基礎研究分野において融合分野開拓に貢献する18のWPI研究拠点が国内に設立され、国際的に活発な研究活動を行っています。詳しくはこちら

13回目となりましたWPIサイエンスシンポジウムでは、全18拠点が集まりWPI若手研究者によるサイエンストーク、研究ポスター発表、各拠点紹介ブースの出展を行います。

サイエンストークでは、私たち「ヒト」について、最新の研究成果をWPI若手研究者が紹介します。午後からは、WPI若手研究者と高校生による研究ポスター発表会・各拠点広報担当者による紹介ブースの出展を行います。最先端の研究に触れて、新しい私を探してみよう!

タイムテーブル

(10:30 開場)

10:50 – 11:00

開会のあいさつ

京都大学 ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi) 斎藤 通紀 拠点長
世界トップレベル研究拠点プログラム 宇川 彰 プログラム・ディレクター

11:00 – 12:15

サイエンストーク – 私たちヒトについて

私たち「ヒト」をテーマにWPI若手研究者によるサイエンストークを行います。
詳細はこちら

11:00 – 11:25
『右と左の分子の世界』
慶應義塾大学 ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(WPI-Bio2Q)
笹部 潤平 先生

11:25 – 11:50
『対話型AIを用いたDNA配列設計の自動化』
大阪大学 ヒューマン・メタバース疾患研究拠点 (WPI-PRIMe)
森 秀人 先生

11:50 – 12:15
『RNAから切り拓くヒトゲノムの未踏領域』
京都大学 ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)
小口 綾貴子 先生

12:15 – 13:30

WPI拠点ブース見学

全国からWPI全拠点が集まって、それぞれのユニークな研究を紹介しています!​
いくつのブースを回れるかな?

13:30 – 16:10

「高校生 x 研究者 ポスター発表会」

高校生と研究者がそれぞれ研究成果を発表します。
どんな議論が生まれるでしょうか!?
詳細はこちら

13:30 – 14:50
ポスターセッションⅠ(高校生発表)

14:50 – 16:10
ポスターセッションⅡ(研究者発表+WPIブース見学)

16:10 – 16:30

優秀ポスター賞の発表・閉会挨拶

アクセス

京都大学百周年時計台記念館​
〒606-8317 京都府京都市左京区吉田本町 (map)

京都市営地下鉄烏丸線 今出川駅から

(地下鉄利用の方は、市営地下鉄烏丸線今出川駅が最寄りです)

市バス 201系統 「出町柳駅 百万遍・祇園」行
乗車:烏丸今出川 → 下車:京大正門前(約15分)

市バス 203系統 「出町柳駅 銀閣寺・錦林車庫」行
乗車:烏丸今出川 → 下車:百万遍(約15分)

JR京都駅から

市バス 206系統 「三十三間堂 清水寺 祇園・北大路バスターミナル」行
乗車:京都駅前 → 下車:京大正門前(約30分)

市バス 7系統 「四条河原町・銀閣寺」行
乗車:京都駅前 → 下車:百万遍(約30分)

  • 206系統は、観光地エリアを運行するため、混雑が予想されます。乗り換えが必要となりますが、上記の今出川駅経由での移動がおすすめです。
  • 運行スケジュールに限りがありますが、「hoop」(京都駅から医学部附属病院への循環路線バス)もございます。詳細は、以下のリンクをご確認ください。
    循環路線バス「hoop」(フープ)